国連グローバル・コンパクト CEO兼事務局長 Lise Kingo

気候変動はようやく世界的危機そのものであると認識されるようになりました。世界中の多くの市民が気候変動による影響を受け、行動を求めて声をあげる人の数は、世界中の多くの若者を含めかつてない程の高まりを見せています。

食糧生産に脅威を与える気候パターンから破壊的な洪水のリスクを高める海面上昇まで、気候変動の影響はその範囲にして世界的であり、規模にして前例を見ない
大きさです。

世界的な気候の緊急状態が人々そして地球双方の生命を脅かし続けるにつれ、ビジネスのオペレーション及び
経済が崩壊していくのをわたしたちは既に目にして
きました。

昨年の11月に公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は、 「2°Cの未来」と「1.5°Cの未来」の違いを証明し、0.5°C毎の気温上昇が大きな違いを
もたらすことを明らかにしました。意欲的な気候行動は17全ての持続可能な開発目標及びパリ協定の実現に
不可欠ですが、その行動は早急になさらなければ
なりません。

わたしたちの唯一の将来は、気候変動がもたらす最悪の影響を制限するわたしたち自身の能力にかかっており、影響の低減のみならず回復力及び適応能力も重要です。幸いなことに、わたしたちには課題にチャレンジする
ためのイノベーション、ツールそして経験があります。

気候変動の新たな波を認識する

今必要とされているのは気候変動を抑制し、その影響に対処するには、全ステークホルダーによるかつてない
ほどの努力が必要だということは誰もが知っていることです。
António Guterres国際連合事務総長は、 TIME誌のインタビューで「気候変動は多国間主義の問題では
なく、あらゆる人の問題である。しかし、多国間主義の価値を証明する機会をもたらすものでもあるだろう。」と述べました。

気候変動という危機の緊急性をもっとも理解している
のは若い世代です。大人たちが交渉に時間をかけている中、若者は迅速な行動を求めています。わたしたちに今必要とされているのは世代間の対話です。すなわち、様々な世代、地域、文化の若者と年配のリーダーが
集まり、気候変動がもたらす課題に挑戦するために団結し、互いのアイディアや解決策を共有することが
求められているのです。

政府と経済に関しては、ネットゼロの繁栄した経済を2050年までに協働実現することが非常に重要です。
この点において企業は、気候ムーブメントの最前線で
リーダーとして立ち上がり、産業界に変化をもたらしてビジネスの在り方を変革するため、政府及び国連と結託する方法を再考する機会を有しているのです。

「1.5°C の未来」実現に向けて行動を起こす

既に2,400を超える企業及び 350人以上の投資家が、
カーボンプライシング(炭素価格付け)、科学的根拠に基づく目標の設定、100%再生可能エネルギーの供給、
気候に関連した財務情報の開示を企業戦略の核に統合
する等の取り組みによりパリ協定推進に貢献して
きました。しかし、このような経済界からの貢献の
高まりにも関わらず、取り組みや投資のペースは 1.5°C
目標達成に決して十分と言える速さではないのが現状
です。

だからこそ、今年初旬に国連グローバル・コンパクト(UNGC)は、25以上の企業、市民社会及び国連の
リーダー等からなる連合と共に、世界の平均気温を
産業革命以前に比べて1.5°Cに抑止することを実現する
ための科学的根拠に基づく目標の設定により、
気候変動対策のために立ち上がるよう経済界に呼びかけを行うグローバルキャンペーンを開始しました。
フロントランナーたちは既に1.5°C 目標に忠実な
ビジネスモデルは可能であることを証明してる上、
そのモデルを実践する企業は将来の経済において
繁栄の中心になる、との証拠も存在します。

しかしながら、消費者、投資家そして政府に強力な
シグナルを送るには、炭素排出量率が高い企業の
ムーブメント参加率が上昇する必要があります。
そうしない限り、1.5°C 目標に忠実な企業戦略が
その企業のビジネス及び世界中に広がる
サプライチェーンの新たな常識となる、という
前向きな転換点に到達することは不可能です。

共に野心を燃やしていく

期限内にこの新たな常識を作り上げることは、
気候変動の最悪の影響を回避するために不可欠です。
わたしたちに残された時間は少なくなってきています。
わたしは、世界中の企業がキャンペーンに参加し、
今すぐ行動を起こすことを強く要求します。
この動きはメインストリームとなる必要があり、
‘1.5
°Cビジネスリーダー’となることでどのような
利益があるのか、が誰にとっても容易に理解可能となる必要があります。しかし、ビジネスの単独行動では効果がありません。企業や投資家が気候変動解決にさらなる
投資を決断するために必要な明確性及び自信を得るために政策は不可欠です。政策は、成長と雇用創出、リスク管理、そして企業の変換の一環としての競争力確保促進に役立ちます。

来たる年は、気候変動に対処するため、そして1.5°Cに
向けた軌道に再び乗るために
非常に重要な一年と
なります。現在、ビジネス及び政府双方が市民社会と
共に何年にもわたる不作為の埋め合わせに向けた
取り組みは遅れをとっています。
それでも尚、企業が立ち上がり、科学的根拠に基づく
目標設定においてリーダーシップを発揮するならば、
わたしたちに希望は残っています。残された時間と選択肢が限られてきた中、この機会を見逃すコストは甚大
です。だからこそ、ビジネスリーダーの皆さん、今すぐにこのムーブメントに参加してください。

企業による気候変動対策の取り組みに並行して、政府は経済発展への道のり及び炭素ゼロの未来に向けて決断力ある投資計画を実行するためにこの機会を活用することが可能です。この好循環を通して、官民のパートナーがさらに意味があり、意欲的な気候行動を特に削減が困難な部門で推進することが可能となります。

取り組みを強化する勇敢な個人、国そして組織は、
明日のリーダーとなる上で優位な立場にあります。
わたしたちの唯一の未来は、あらゆる人々が力を
あわせて気候行動及び目標をスケールアップし、
ビジネスリーダーがそのプロセスにおいて
リーダーシップを発揮できるか否かにかかっています。
わたしたちはより良くより持続可能な世界への変革
に対して真剣であることを若い世代に証明して
いかなければならないのです。

詳細は1.5°C Business Leadership reportをご覧ください。