Ørsted,企業戦略・ステークホルダーリレーションズ常務取締役,Jakob Askou Bøss

他の組織及び産業はØrstedの画期的な10年間にわたる変革から学ぶべきです。− Ørsted企業戦略・ステークホルダーリレーションズ 常務取締役Jakob Askou Bøss

10年

もし誰かが10年前に、ヨーロッパで化石燃料ベースの
主要電力会社
が、その供給エネルギーの80%以上を今後10年以内に再生可能エネルギーに変更する、と言ったとしたらあなたは信じることができますか。想像することすら難しいでしょう。しかし、正にそれを実現して
しまったのがØrstedです。10年。2020年から2030年も
世界全体の炭素排出量を半減し、1.5℃シナリオに向けて動き出さなければならな時です。今日の決定は将来の
排出抑制を可能とし、将来の温暖化のレベルに影響を
与え、最終的に人類への影響の大きさを決定づけることになります。

「わたしたちは85/15ビジョンにより変革を始め
ました。」とØrstedにて企業戦略及びステークホルダーリレーションズを統括するJakobは語ります。2008年、Ørstedの発電及び発熱の85%が化石燃料によるもので
あり、再生可能エネルギーはたった15%でした。目標はこの比率を覆すことでした。しかし、この変革は私たちの予想を上回る速さで進んでいきました。2019年半ば
までに、供給エネルギーの82%が洋上風力、太陽エネ
ルギー、バイオエネルギーを含む再生可能資源を利用
した発電に変更されました。この比率は既になされた
決定に基づき、2025年までに99%に上昇する予定で
あり、これはØrstedのエネルギー供給による温室効果
ガス排出量がほぼゼロになることを意味します。

「世界は温暖化を1.5℃以下にとどめるための意欲的な気候行動を切実に要しています。だからこそ、わたしたちは変革の旅に出発するよう他社を鼓舞していきたいのです。」

− Ørsted 企業戦略・ステークホルダーリレーションズ 常務取締役
Jakob Askou Bøss

カギとなる要素

これらのデータや裏付けとなる数値は、なぜ正真正銘の信用に値する 1.5°C のビジネス・リーダーシップが
新たな考え方及びビジネスモデルを必要とするのかを
証明します。そして何よりスピードが重要です。
未だに
憂慮すべき結論を下した報告書の方が数多く存在
します。
尚これらの報告書は、わたしたちは 1.5°C目標に遠く及ばない中で重要な転換期に近づいおり、気温は
今後3°C 以上上昇する、としています。
だからこそ、今年が本当に “最後” の1.5°C 目標実現に
向けたビジネス・リーダーシップへの要請に答える年
なのです。

私たちが直面する課題のスピード及びスケールを考慮
すると、2030年の期限に間に合わせる、と確言することはできません。その代わり、3年というこれまでよりはるかに短い期間内に画期的な成果をもたらさなければ
ならいのです。企業全般が1,000 日以内に主要な変革を
もたらすことが不可能な場合、目標達成にさらなる後れを取ることとなり、いかなる1.5°Cビジネス・リーダーシップに関するナラティブも事実というよりフィクションとなってしまうでしょう。
これこそが1.5°Cビジネス・リーダーシップがより
意欲的な目標への取り組み以上のものを伴うべきである理由です。
あらゆる企業は、持続可能な社会への発展において
自社の役割及び責任を拡大するために取り組むことが
求められているのです。

具体的な施策の一つに1.5°C運動に参加し目標達成に
取り組むことが挙げられます。もう一つは前述より
はるかに要求の高い課題となる、全ての事業決定に目標を統合し、全社員からの同意の下で企業全体で取り組みを浸透させることが挙げられます。これは、新たな企業アイデンティティ構築の問題です。
1.5°C運動は
新たな国際秩序において企業の存在理由を
再考する機会であり、 “ビジネスモデル変革の起爆剤”
として捉えられるべきです。この観点の理解及び受容に失敗することは、取り組みがCEOによるその場の
からくりへと減じるリスクをはらんでいます。
1.5°Cビジネス・リーダーへの変革は、企業全体に影響をもたらす抜本的な戦略決定と判断されるべきです。

これまでに600社以上の企業が科学的根拠に基づく目標の設定に、その内約60社が1.5°C.目標実現に取り組んで
きました。これは出発点としてはいいニュースと
言えますが、実際に問題となるのは最初の成果報告書
です。どのような結果をもたらし、どのようにビジネスモデルを変え、気候に影響を与えたのか。わたしたちにはこれらの教訓から非常に迅速に学ぶこと、そして企業
経営者を1.5°C運動に参加するよう刺激することが
できる 「1.5°Cビジネスヒーロー」 たちが必要です。

だからこそ 「1.5°Cビジネス・リーダーシップ」 は、
その社会における役割と責任の拡大が求められる明日のCEOの必須条件として捉えられるべきなのです。
1.5°C実現に向けてアクションを起こすことは、
民間企業を持続可能な新たな国際秩序の起業家とする
新たなビジネス・パラダイムを認識・受容することを
意味します。17の持続可能な開発目標は、企業から
受け入れられるビジネスの新たな役割を定義しました。しかしながらUNGCによる調査で公表されているように、ビジネスはその取り組みを新たなビジネスモデル、戦略そして解決策に今こそ繋げていかなければなりません。

全ては意識及び混乱したビジネス環境にどのように
アプローチするかによります。
リスクと機会の違いとは、どれだけそれに早く気がつくか、そしてリスクマネジメントと機会の違いは受動的であるか積極的であるかの問題である、ということを
あなたは理解しなければなりません。気温上昇を 1.5°C 未満に抑えるにはどのようなリーダーシップが必要
であるかについて疑念の余地はありません。

明確な政策的枠組み

欧州の2020エネルギー政策目標は2008年に採択され、
欧州における2020年に向けたエネルギー開発の明確な
方向性を示しました。Jakobはこのような長期に及ぶ
政策的枠組みこそがØrstedの意思決定のカギとなった、と捉えています。

Ørstedはさらに洋上風力発電による均等化発電原価の
押し下げにおいて主導的な地位を築いてきました。
例えば、英国政府が国内のエネルギー源の多様化を目標として掲げた際、Ørstedは2013年に2020年までに
新たな洋上風力発電を1MWh(メガワット)毎100ユーロとする意欲的な価格引き下げ目標を設定しました。Ørstedは同目標は予定より3年以上早く達成し、コスト削減率は60%以上にのぼりました。
コスト削減への取り組みは、英国国内の大規模な洋上
発電開発に向けた政治的モメンタムを創生していく上で重要な役割を果たしました。英国は今日世界最大の洋上発電市場です。

意欲的な目標

ビジネスの持続可能な発展に向けた意欲的な目標の
設定・達成はしばしば政治枠組みにより設定された方向性に基づくものであり、Ørstedの変革に寄与して
きました。これは85/15ビジョン、大胆な洋上発電
コスト削減目標および2013年以降の炭素排出量削減目標を含む、とJakobは語ります。

Ørstedは発電における排出ガスに向けて科学的根拠に
基づく目標をいち早く設定した企業の一つです。
同社は2025年までに現在発電温室効果ガス98%削減という、2006年の目標と比べさらに意欲的な目標を掲げ、取り組みを進めています。さらに2018年(基準年)から2030年までに最終消費及びサプライチェーンにおける
間接的排出量50%削減取り組んでいます。Ørstedは最近1.5°C運動に参加しました。

革新的なパートナーシップ

企業は政策枠組み内で取り組みを推進することが可能、とJakobは語ります。事実Ørstedの洋上発電所の革新的な財政モデルは洋上発電発展の加速に貢献した、と話します。安定かつ長期的な政策は、Ørstedが投資家を招集し洋上風力発電所の所有権50%獲得を可能にしました。こうして新たな洋上発電所への投資継続を抑えることで、洋上風力発電のさらなる成長・拡大推進を成し遂げました。今や洋上発電の開発は新たな石炭火力あるいはガス発電所を新たに建築するよりも安価となりました

ビジョンを現実に

JakobはØrstedはサステナブルなエネルギー会社への
変革完了に向けて良い軌道に乗っている、と信じて
います。「もしブラックからグリーンエネルギーへの
わたしたちの意欲的な変革に乗り出していなかったら、わたしたちのビジネスモデルは今日の深刻なプレッシャーに置かれることとなるでしょう。
その代わり、再生可能エネルギーの新たな世界の目的に適ったビジネスモデルを有するグリーンエネルギーを
供給会社創設に向けたビジョンにより、わたし自身を
再生させることを決意しました。今日、この10年間を
通してビジョンを現実のものとすることが可能だと
わたしたちは証明してきました。」
そしてJakobはこう締めくくりました。

「世界は温暖化を1.5℃以下にとどめるための意欲的な気候行動を切実に要しています。だからこそ、わたしたちは変革の旅に出発するよう他社を鼓舞していきたいのです。」

¹ 欧州2020気候変動・エネルギー政策は、欧州全体が2020年までに目標達成を実現するための加盟国に義務付けられた法律
² Bloomberg New Energy Finance, 2019. New Energy Outlook 2019.