DNV GL, 会長兼CEO, Remi Eriksen 

既存のテクノロジーによりパリ協定が掲げた目標達成
といった、私たちが望む未来をつくりだすことが可能
ですが、それには様々な分野における取り組みの加速が不可欠です。

これはDNV GL会長兼CEOであるRemi Eriksenからの
メッセージです。

今世紀末までに地球温暖化を1.5℃抑止するという目標
達成に世界が遠く及ばないことは広く知られていることです。「あまり知られていないのは、1.5℃の未来実現
からどれ位離れているのか、およびそれには何が必要なのかに関する正確な情報です」とDNV GL会長兼CEOであるRemi Eriksenは語ります。「これは、わたしが
エネルギー変換を勉強するための研究を開始した主な
理由の一つです。研究結果はわたしにそして実に人類
全員に大きな懸念を与えるものでした。」

最近発表された、DNV GLの第3版エネルギー移行見通し(Energy Transition Outlook)であるGlobal and Forecast to 2050の研究結果は、同社が大げさな警報を
発するような団体でないが故にまさに驚くべきもの
でした。DNV GLのエネルギー移行研究プログラムの
ディレクターであるSverre Alvikは、4年間の大半を世界のエネルギーシステムのデザイン、拡大、改良に費やし、グローバルなエネルギー需要と供給の把握に成功しました。「わたしたちは世界中の同僚数百人、政治・教育
分野の専門家数十人の“現場の”専門知識を利用して
きました。」

高速な変換

SverreはDNV GLの予測をエネルギー移行における
「代表的ケース」として捉えています。「希望的観測は
わたしたちの見通しに存在しません。政策は脱炭素に
重点を置いていくと予測していますが、2050年の炭素
価格は今日と比べてそれ程高くはならないでしょう。」
そうであるにもかかわらず、DNV GLは2050年までに
エネルギーの電化は現状レベルの2倍以上にまで進み、
太陽光発電と風力発電が63%を占めることになる、との推定に基づき、2050年までにエネルギー構成が化石燃料と非化石燃料がほぼ半々の低炭素エネルギーシステムへの急速な変換を予測しています。(現在のエネルギー構成比率は化石燃料80%/非化石燃料20%)。グローバル経済や人口の堅調な成長にもかかわらず、世界の一次エネルギー消費量が2030年にピークを迎えるといった予測が示すように、エネルギー供給および使用方法における効率性向上も来たる数十年で強化されることになるでしょう。

とまらない排出

DNV GLの見通しはこのような劇的な変化を伴っても
今世紀末までに地球温暖化が産業革命前の平均
気温から2.4℃上昇する、と予測しています。
これは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)及び世界の科学界が危険と認識するレベルです。

Figure1を参照しながら、Sverreは「2028年には平均
気温上昇が
1.5℃以内に収まる炭素収支を、そして2049年には2℃以内に収まる炭素収支を越え、人類はその時点
からほぼ今世紀末にかけて化石燃料を燃やし続ける、
との予測が導かれました。2050年だけでも、世界の
エネルギー部門の二酸化炭素排出量は18ギガトンに
達するでしょう。結果的に2050年までに合計770ギガ
トンの二酸化炭素を排出することになるのです。
わたしたちの予測が示すように、エネルギー変革の
スピードは明らかに不十分なのです。」

わたしたちに何ができるのか?

Sverreと彼の研究チームは3種類の主要エネルギー対応策について定量的予測を実施しました。

「今日から再生可能エネルギーによる発電に全変換することは可能です。悲しいことにこれを実行したとしても1.5℃はもちろん2℃目標達成にさえ遠く及ばないのです。」

「私たちが予測する年2.5%よりはるかに速いスピードでのエネルギー強度削減も考えられます。しかし、2℃目標達成には年4.8%の削減が必要であり、これは現実的ではありません。効率性向上を唯一の1.5℃未来達成のための手段とすることは不可能です。」

「大規模な炭素回収も可能ですが、たとえ石炭及びガス発電に関連して排出された炭素が全て回収されたとしてもこれだけでは不十分です。近年世界におけるその非常に低速な発展具合を鑑みると、炭素隔離貯留技術(CCS)はすがるには細すぎる藁に過ぎません。」

特効薬は存在しない

世界が危険な温暖化を阻止するには、少なくとも同時に
3分野における政策策定が不可欠です。その3分野とは、さらなるエネルギー効率化、再生エネルギー利用拡大、炭素隔離貯留技術(CCS)の工業規模化を指します。Sverreは「こららの政策化を『必要なこと全ての一部』として捉えてはいけません。逆にわたしたちは無数の『必要なこと全て』に取り組む必要があり、個々の取り組みを
確実に大規模化することは困難を極めます」。例えば、2℃の未来を構築するのに十分とDNV GLが特定した分野の内2つの大規模な改善だけでは、1.5℃目標達成には
不十分なのです。

必要なテクノロジーが存在する一方、
政策が存在しない

「1.5℃目標実現に必要なテクノロジーは既に存在
します。それらの展開が急速に進んだ場合コストは急速に低下し、自動強化効果が発生します」とSverreは
話します。しかし、これはパリ協定に基づく国が決定
する貢献(NDCs)を劇的に発展させる政策がなければ成功しません。Figure2は対策の組み合わせにより1.5℃
もしくは2℃目標達成にどのような違いが生まれるのかを示しています。図が示すように、排出量削減は重要なだけでなく実に緊要なのです。

直ちに行動を起こして

森林再生、植林、バイオエネルギー利用によるCO2の
回収貯留(BECCS)や直接空気回収により恒久的に二酸化炭素を大気中から除去する実質的ネガティブエミッション技術による貯留を政策に掲げる政治家が多すぎる、とSverreは考えます。

「こららの技術のうち大規模化が進んでいるものは今日一つとして存在しません。もっとも、非常に多くの1.5℃や2℃シナリオが、実質的ネガティブエミッション
プログラムの大規模化が今世紀半ばから今世紀末に開始される、という想像に基づき各自の目標『達成』を予測しているのです。」

世界をリードするリスクマネジメント企業として、DNV GLは人類の対応の遅れがもたらすリスクと結果は大き
すぎる、と見ています。人為的排出の継続はメタンを
大量排出する永久凍土層の早期融解といった様々な閾値を超越するリスクをはらんでいます。

「わたしたちの優先事項は今日何ができるか、です」とSverreは語ります。「既存のテクノロジーによりパリ
協定が掲げた目標達成といった、私たちが望む未来を
つくりだすことが可能ですが、それには様々な分野に
おける取り組みの加速が不可欠です。」

詳細は1.5°C Business Leadership reportをご覧ください。

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